「ヘルパー不足は国の責任訴訟」判決
2022年11月1日。東京地方裁判所にて「ホームヘルパー国家賠償訴訟」に対する判決が言い渡されました。
こちらは、当裁判を傍聴したグレースケア社員のレポートです。
主文
1 原告らの請求をいずれも棄却する。
2 訴訟費用は原告らの負担とする。
判決が言い渡されると、一瞬の静寂の後に傍聴席にいた原告団や介護当事者からの「理由を説明してくれ」「これでは日本の介護保険制度は崩壊するぞ」といった悲痛な訴えがこだましました。
当訴訟は、 訪問介護労働者がケア時間以外の移動・待機、さらにはキャンセルに係る賃金が十分に支払われず、彼らの尊厳が傷つけられたとして、国に対して損害賠償を求め起こしたものです。
2021年1月に厚生労働省が通知した声明には、ヘルパーの移動・待機・キャンセル等を労働時間とする際の定義を確認し、それに該当する場合は事業主がヘルパーに対し賃金を支払うべきであると明記されました。
しかし、現在の介護報酬の中では事業主がヘルパーに対し、上記に係る賃金の支払いをするのが難しく、支払いをした場合、事業所自体が倒産する可能性もあるのが現状です。
今回の裁判、そしてこの国の介護をめぐる現状を知った上で、皆さまはどのように感じるでしょうか。
原告団の主張、この国の現状、裁判所の判決、それらに対して様々な意見があることでしょう。
今回の裁判は、福祉の充実こそが多様な人々のその人らしい生活を実現させ、社会全体の幸福を支える基盤であると我々に再確認させるものでした。
そして、その陰にある、諸問題の存在も広く社会に知らしめました。
今こそ我々には、介護する側、される側、その家族のみの問題として傍観するのではなく、ひとりひとりが関心を持ち、議論の土俵に上がる姿勢が求められているのではないでしょうか。 T.N