暮らしを訪ねて ~ 患者仲間の力になりたい!

  患者仲間の力になりたい!

メンタルケア心理士を目指すMさん(利用者)の暮らしをご紹介します。  

 

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市内にお住いのMさん(47歳)は、マレーシア生まれの猫・タラちゃんと息子さんの3人暮らし。外出がお好きで、よく電動車いすに乗ってランチに行ったり、買い物にでかけたりしています。ヘルパーの訪問は週3回。洗髪や掃除などをお手伝いしています。

 

       

 

MさんがALS(※)を発症したのは20年前のこと。娘さんが生まれたあとに指が変形し、その後も手のこわばりが続きました。子どもが生まれる前は、実業団の会社のテニスクラブで、コーチをしながら試合に回っていたMさん。テニスのやりすぎのせいかな…そう思って接骨院に通いましたが、症状は治りません。その2年後に息子さんが生まれると、手はさらに曲がり指と指の間の筋肉がやせてきたので、初めて精密検査を受け、ALSと診断されました。パソコンで調べると、ALSは進行が早く、5年ぐらいで死ぬ病気だと書いてあります。「誤診じゃない?ちょっと指が曲がったぐらいで…」 そう思いながら、日々を過ごしていました。その後は、子育て中心の生活に。指先を使った動作が難しいときは、ボタンがついていない服を着せるなどして工夫しました。途中、ご主人の転勤でマレーシアに移住しましたが、現地は気温差がなく、身体がつりやすいMさんは大変過ごしやすかったそうです。今一緒に住んでいるタラちゃんとはここで出会いました。途中タイに引っ越しましたが、計5年間の海外生活を経て日本に帰国しました。「できることは自分で」がモットーのMさん。現在、室内は歩行器を使ったり壁をつたって歩き、外出は電動車いすを使用しています。洗髪や足浴、掃除などをヘルパーが支援しながら、楽しいおしゃべりに夢中になることもしばしば。去年からは在宅ワークもスタート。マウスを中指でクリックしながら、情報を入力したり集計したりする仕事をしています。「何にもないときより時間が決まっているので、メリハリができていい」。納期が決まっている際は土日に働くこともあるそうです。

 

       

 

そんなMさんの今の目標は、同じ病気で悩む人たちの精神的なケアをすること。ALSは病気そのものを治す薬がまだ見つかっておらず、診断を受けた本人や家族は大きな不安を抱えます。「病気のことは医者に聞けばいいけど、気持ちのこと、心がついていかないところのケアをやりたい」。 実際に都内の患者交流会で悩んでいる方々に出会い、その想いが強くなっています。ご自身も病気の進行は緩やかですが、これまで何度も転倒し、頭や腕、あばらや手など、骨折を多く経験し、この病気とともに生きていく大変さを痛感しています。「ただ話を聞くだけだと…。ちゃんと資格を取った方がいいかなと思って」と、いまは通信講座で心理カウンセラーの勉強もしています。子育てに海外生活を経て、いまは仕事に勉強にと充実した暮らしを送るMさん。地方の友人に会いに行ったり、コンサートに出かけたり、まだまだやりたいことがたくさんあるとのこと。これからも、人とのつながりを大切にしながら、この病気とともに一日一日を暮らしていきます。

 

   

 

Mさんのもう一つの顔は、ALSなど難病の方のコミュニケーション支援をしているオリィ研究所の“自称”アンバサダー!代表の吉藤健太朗さんが掲げる理念に共感し、トークショーに足を運ぶなどして応援しています。

 

※ ALS(筋萎縮性側索硬化症):筋肉を動かす神経(運動ニューロン)が障害を受けることで、手足や肺など身体の筋肉がだんだん動かせなくなる難病。必要に応じてヘルパーや補助器具を活用しながら、生活や仕事を続けます。