【おでかけ通信】宝物を右手に握りしめて 新しい暮らしへの大切な一歩のお手伝い
グレースケアでは、日々の生活サポートだけでなく、お墓参りや旅行、そして遠方への引っ越しなど、一般的な介護保険の枠内では難しい「長距離の移動」に付き添うアテンド(おでかけ支援)も行っています。
今回ご紹介するのは東京から秋田県湯沢市までの長距離アテンドを行った際のお話です。
U子さんは普段、東京のグループホームで生活され、週末はご実家でご家族と過ごされていました。しかし、ご両親も高齢になられ、「自分たちがいなくなった後も安心して暮らせる場所を見つけてあげたい」という思いから、後見人さんとともに新しい住まいを探されていました。
そして今回、秋田県湯沢市にあるグループホームへの入居が決まりました。
私の役割は、後見人さんと一緒にU子さんを安全に新しい生活の場までお送りすることです。 当日は初対面でしたが、事前にお母様や関係機関から情報をいただき、ご本人が安心して移動できるよう準備を行いました。

彼女のたからもの
ご自宅へ伺うと、ご家族皆さまが揃って見送ってくださいました。ご本人にご挨拶をすると、そっと目で合図を返してくださり、その瞬間に少し心の距離が近づいたように感じました。 U子さんは、ティッシュや古い手帳、小物入れ、紐など、ご自身にとって大切な「宝物」をしっかりと右手に握りしめていました。まずはその宝物をなくさないことをお約束し、一緒に旅をスタートしました。
ご家族との涙のお別れの後、タクシーで駅へ向かい、東京駅からは新幹線と在来線を乗り継ぐ長い移動です。長距離の移動も、新幹線も初めてというU子さん。手をつなぎながらゆっくり歩き、「手があったかいですね」と声をかけると、満面の笑みを見せてくださいました。
体力面への負担を考え、移動はすべてエレベーターを利用しながら進みました。少し歩いては休憩し、また少し歩く。そのペースに合わせながら、無事に新幹線へ乗車することができました。
ところが、朝早くからの移動による疲れと緊張、そして乗り物酔いも重なり、お弁当を少し食べたところで体調が優れなくなってしまいました。胸や背中を優しくさすりながら寄り添っていると、お母様から「自分から言葉を発することはほとんどありません」と聞いていたU子さんが小さな声でこう言ってくれました。
「気持ちいい」
その一言に、胸がいっぱいになりました。その後は少しずつ表情も和らぎ、最後の1時間ほどは安心したように眠ることができました。大曲駅で在来線に乗り換え、無事に湯沢駅へ到着。駅では新しいグループホームの職員さんたちが温かく迎えてくださり、安心してバトンタッチすることができました。
初めて会った人と遠く離れた場所へ向かうことは、想像以上に大きな不安があったと思います。それでも数時間を共に過ごす中で少しずつ信頼関係が生まれ、U子さんの緊張も和らいでいきました。新しい生活へ向かうための大切な橋渡しができたのではないかと感じています。