長野 湯田中温泉、善光寺参りと美術館巡り 2泊3日の旅
W様の「温泉に浸かりたい!」という切なる希望を叶えるため、入浴リフトが設置されている旅館へ期待に胸を膨らませながら出発しました。
上野駅から北陸新幹線で長野駅へ向かい、長野電鉄スノーモンキー号に乗り換えると、車窓からはリンゴ畑やブドウ棚がたくさん見えてきます。「湯の街」湯田中駅に到着。近くには、ニホンザルを間近で観察することができる地獄谷野猿公苑があります。
さてさて駅に降り立ち、まず驚いたのが…人がほとんど歩いていない、商店も閉まっている、コンビニが1軒あるだけ。まるで数十年前にタイムスリップしたかのようで、よくいえばノスタルジック。便利な都会に慣れ過ぎているから、これはこれで普段と違う雰囲気を味わおう、不便を楽しんでみようということにしました。
宿は駅から坂を下って7分ほど。旅館「はくら」は全館バリアフリーをうたっており、大浴場には入浴用リフトやシャワーキャリーも備わっています。
まずは部屋内をチェック。W様の身体状況にあわせて、電動ベッドの向きを変えたり、必要なものを手元にすべて配置しなおしたりして、動線を確保します。また、小上がりの畳敷きの奥に冷蔵庫が置かれていたので車椅子では行けず、飲み物はあらかじめ出してご本人のそばに置いておく必要があるなど、実際に行ってみて修正するところがたくさんありました。
さあ、本日のメインイベント、温泉入浴です。まずは宿の方に入浴リフトの操作方法を教わります。シャワーキャリーが上下分離するタイプで、上のイスの四方にある頑丈なヒモを金具にかけてリモコンで上げ下げ、左右移動は手でイスを動かします。思っていたより簡単な操作です。
W様は最初は少し怖がっていらっしゃいましたが、ゆっくりゆっくりと湯に浸かっていくと「あー気持ちいい!最高に幸せだ。5年ぶりに浸かれたよ!」と満面の笑顔。ここの温泉は源泉かけ流しの塩化物・硫酸塩温泉で関節痛などに効き、湯上り後もしばらくポカポカが続いて、体が芯から温まっていることが実感できますよと、温泉ソムリエである私の情報もちらりとお伝えしました。
お待ちかねの夕食は信州ポークなど地産のものが多く、特に前菜のしそ巻きを気に入り、宿の方にこれはどこで売っているのかと聞かれるほどでした。温泉に入って、美味しい食事も堪能し、本日は早めに就寝。
2日目は宿周辺でのんびりするつもりでしたが、いつ雨が降るか分からない天気予報だったので、3日目に予定していた観光を先にすることにしました。旅館の方にお弁当を作っていただき、朝早い電車で長野駅へ。タクシーでまずは長野県立美術館へ向かい、日本画家「東山魁夷」の作品を鑑賞。「素晴らしい。見事だ」を連発され、ミュージアムショップではお土産のポストカードを購入し、次回の作品の参考にするとのことでした。
美術館にいる間は雨が降っていましたが、そちらを出ると雨は止み、すぐ隣にある善光寺へ。以前いらした時には改修中だったそうで、今日は全貌を見ることができて嬉しいとのこと。本堂横には車椅子用スロープがあり、スムーズに本堂内に入ってお参りすることができます。治したい箇所をさすると病気が良くなるといわれる「びんずる尊者」が鎮座しており、W様は尊者の足を一生懸命さすられていました。
昼食は参道にある門前そば。手打ちの麺は香りが高く風味が堪能でき、「こんなに美味しいそばは久しぶりだよ」と大満足のご様子でした。
善光寺にはバリアフリーマップがあり、車椅子での参拝順路や多目的トイレの場所が詳しく載っています。他にも長野市内繁華街周辺のバリアフリートイレマップもあり、あわせてチェックしておきたい「お役立ちアイテム」です。
帰りは長野駅まで、参道から門前町へと続く中央通り2㎞を40分かけてまっすぐ下っていきます。道の両側の建物に風情があり、川越の街並みに似ているよう。下り道は思っていたより勾配があるので、慎重に車椅子を操作しました。
3日目の最終日は長野駅から近い、水野美術館へ。こちらでは近現代日本画の巨匠「横山大観」の作品を鑑賞しました。庭園も絵画のように美しく、大変目の保養になったとのことで、お土産のポストカードをじっくり選ばれていました。
今回の旅では温泉に浸かることができ、行きたかった善光寺参りと旅のマストである美術館巡りをコンプリートできた達成感で、帰りの新幹線では満ち足りた表情をされていました。全国各地行ったことのない美術館はまだまだあるので、これからも楽しみは尽きないと意欲満々です。